凋落していくドイツ。なぜドイツはこうなってしまったのか、川口マーン惠美さんに聞く=鈴木傾城 | マネーボイス
以前よりフォルクスワーゲンは、トヨタを最大のライバルと見ていて、絶対に「追いつけ、追い越せ」というのがあったんですよね。でもアメリカ市場ではどうしても勝てなかった。そこで、温暖化ガス対策が言われ始めたとき、ディーゼルに舵を切りました。
ドイツのディーゼルの技術は世界一でしたし、ディーゼルはCO2をほとんど出さないので、ドイツ政府もそれをものすごく応援していました。
ディーゼルって車自体はガソリン車より高いんですけれども、政府はディーゼルにかける税金を調整して安くしていましたので、頑張って買っちゃえばあとの運用費はガソリン車よりも割安だった。政治の意思でそうなっていたんです。
ただ、その後改善しようと思えばできないわけじゃなかったし、実際に改善する方法もあった。
それなのに、結局、その後、EUの窒素化合物の排出基準は、もう絶対に無理というところまで厳しくなり、追い詰められたフォルクスワーゲンはディーゼルを捨てました。
EUで規制を熱心に進めていたのもドイツでしたから、これはやはり政治の圧力が働いたのだろうとしか思えなかったですね。
それもあるんですが、実はフォルクスワーゲンがディーゼルをやめてEVにシフトした一番の理由は、中国の存在もあります。中国はEVシフトに切り替えていて、それでフォルクスワーゲンも「中国で売るにはEV作りしかない」と中国市場を見据えてEVシフトをやったんです。
フォルクスワーゲンは生産車の4割が中国向けですから、「そのうちの何%かはEVじゃなきゃもう買えません」と中国政府が言ってきたらEVを作るしかない。生き残るためには中国市場が必要で、そのためにはEVを作らなければならないという理由は、かなり大きかったと思いますね。
ただ「中国に売るために」という理由でEVシフトをお客さんに強いることはできないから、「環境のために」というのがフォルクスワーゲンの理論武装になったわけです。